YOUは何しに熊本へ!? 【後編】明日から始める!インバウンド集客の実践ステップ
こんにちは、村田久中小企業診断士事務所、経営コンサルタントの村田です。
前編の記事では、熊本を訪れる外国人観光客の実態と「解像度を上げる」ことの重要性についてお伝えしました。
台湾・韓国・香港・中国の4カ国で熊本の宿泊者数の8割を占めること、リピーターは日本食・温泉・自然・買い物を求めていること、そして「困ったことがなかった」という回答の裏にある重要な示唆についてお話ししました。
後編では、「では、具体的に何をすればいいのか?」という皆様の疑問にお答えします。
明日から、いえ、今日から取り組める実践的なインバウンド集客施策をご紹介します。
インバウンド売上拡大の3ステップ
講演の中で最も反響が大きかったのが、この「明日から取り組めるインバウンド売上拡大策」でした。
インバウンド対応というと、「英語が話せないと無理」「大きな投資が必要」と思われがちですが、実はそうではありません。
重要なのは、適切なタイミングで、適切な情報を、適切な方法で届けることです。
そのために必要な3つのステップをご紹介します。

【STEP1】ターゲット国・エリアを明確にする
まず相手を知ることから始める
皆さんは、誰かにプレゼントを渡すとき、何をしますか?
人気商品を探す前に、おしゃれな雑貨屋に行く前に、予算を決める前に。
まず考えるべきは「その友人は何が好きか? 何を求めているか?」ということではないでしょうか。
インバウンド対応も全く同じです。
前編でお伝えしたように、熊本には台湾・韓国・香港・中国から多くの方が訪れています。
でも、この4カ国・エリアは、文化も価値観も求めるものも全く異なります。
国別の特徴を理解する
例えば:
- 台湾:日本食・温泉・自然を好み、SNS発信が活発。繁体字での情報提供が効果的
- 韓国:トレンドに敏感で、「映える」スポットを重視。韓国語表記とInstagramが重要
- 香港:ショッピング志向が強く、免税制度への関心が高い
- 中国:高品質な商品を求め、WeChatやWeibo、小紅書(RED)での情報収集が主流
あなたのお店・サービスは、どの国のお客様に最も喜ばれますか?
全てに対応しようとすると中途半端になります。
まずは1〜2カ国に絞って、深く理解し、集中的にアプローチすることが成功の鍵です。
(例)台湾の方の特徴・好み

【STEP2】旅マエ戦略 - 来日前に選ばれる仕掛け
ターゲットを決めたら、次は「旅マエ」戦略です。
「旅マエ」とは、外国人観光客が日本に来る6ヶ月〜2ヶ月前のタイミングを指します。
ちなみに熊本を訪れる訪日外国人は3月・4月と10月〜12月がピークです。

3月の集客を狙うのであれば、早くて10月から遅くても1月には情報発信をスタートさせる必要があります。
なぜ旅マエが重要なのか?
前編で「困ったことがなかった」という回答が最多だったことをお伝えしました。
その背景には「スマートフォンで事前に情報収集し、行き先を決めている」という行動パターンがあります。
つまり、日本に来る前に、すでに「どこで何を買うか、どこで何を食べるか」が決まっているのです。
旅マエで効果的な施策
1. Googleマップの多言語化
これが最も重要で、最も効果が高い施策です。
多くの店舗様が誤解されているのですが、Googleマップの店舗名や説明文は自動翻訳されません。
つまり、日本語だけで登録していると、外国人には日本語のまま表示されてしまうのです。
以下の例は、日本語のGoogleマップで韓国釜山の「焼肉」を検索した場合の表示例です。

どうしても日本語で記載されているお店に目が入ってしまいますよね。
【今すぐできる対応】
- Googleビジネスプロフィールにログイン
- 店舗情報の編集画面で、言語ごとに情報を追加
- 最低限、英語と繁体字(台湾)の2言語を登録
例えば:
【日本語】
熊本の老舗和菓子店。創業200年の伝統の味を守り続けています。
季節の和菓子づくり体験も人気です。
【English】
Long-established Japanese sweets shop in Kumamoto.
Traditional taste for 200 years.
Seasonal wagashi-making experience available.
【繁體中文】
熊本老字號和菓子店。守護200年傳統味道。
也提供季節和菓子製作體驗。
2. SNSでの多言語発信
InstagramやYouTubeでの発信も効果的です。
ポイントは、ハッシュタグも多言語で設定すること。
台湾向けなら:
- #熊本美食 #熊本必吃 #熊本購物
- #熊本旅遊 #九州旅行 #網美景點
韓国向けなら:
- #구마모토맛집 #구마모토여행 #규슈여행
これらのハッシュタグで検索している人に、あなたのお店の情報が届きます。
3. リール動画・ショート動画の活用
特に効果が高いのが、30秒〜1分程度の短い動画です。
- 商品ができあがる様子
- 店内の雰囲気
- お客様が喜んでいる様子
これらを短く編集して投稿するだけで、言語を超えて魅力が伝わります。
【STEP3】旅ナカ戦略 - 滞在中のストレスを解消する
「旅マエ」で興味を持ってもらった後は、「旅ナカ(滞在中)」でしっかりと満足してもらう必要があります。
前編でお伝えした通り、都市部で「困ったことがなかった」外国人が地方に来ると、様々な課題に直面します。
この課題を解決することが、リピーター獲得と口コミ拡大の鍵となります。
言葉が通じなくてもOK! 買い物の利便性向上策
1. 免税対応の見える化
外国人観光客は免税制度に大きな関心を持っています。
「5,000円以上で免税」これを分かりやすく伝えるだけで、購買意欲が高まります。

【具体的な施策】
- 免税パックの設定(例:1箱2,000円の商品を3箱セットで6,000円)
- 店頭に「Tax Free 5,000円以上」のサインを掲示
- レジ近くに「追加で○○円で免税になります」の案内
ピクトグラム(絵文字)と数字を使えば、言葉がなくても伝わります。
2. 商品内容の「見える化」
外国人にとって、中身が見えない商品は購入のハードルが高いです。
- パッケージの一部を透明にする
- 試供品を設置する
- 商品の写真と説明を多言語で掲示する
- QRコードで原材料表示(アレルギー対応)
特に食品の場合、原材料への関心が高いです。宗教上の理由で食べられないものがある方もいます。
3. 松竹梅のセット展開
「選択肢が多すぎると選べない」これは人間の心理です。
3つの価格帯でセットを用意すると、選びやすく、単価も上がります。
例:
- 松:5,000円(Premium Selection - 限定商品入り)
- 竹:3,000円(Popular Set - 人気商品詰め合わせ)
- 梅:1,500円(Trial Pack - お試しセット)
「限定」「人気」というキーワードも効果的です。
4. 軽量化・少量化
外国人観光客の大きな悩みは「荷物が重くなること」です。
- 小分けパッケージの用意
- 配送サービスの案内(多言語で)
- コンパクトなギフトセット
これらの配慮が「また来たい」につながります。
文化の違いによるトラブルを未然に防ぐ
よくあるトラブルとその対策
試着室での靴 → 「Please remove your shoes(靴を脱いでください)」のサイン
支払い方法の誤解 → 「分割払い可/不可」を明記
返品・交換のルール → 「返品交換不可」「要レシート」を多言語表示
試供品の過剰使用 → 「おひとり様1個まで」のピクトグラム
これらを事前に表示しておくだけで、トラブルの9割は防げます。
ピクトグラムの活用
最近、私がお勧めしているのが、ChatGPTなどのAIを使ったピクトグラム作成です。

【ChatGPTへの依頼例】
「試供品はお一人様1個まで」という注意書きを
分かりやすいピクトグラム(絵文字)で表現してください。
日本語、英語、繁体字、韓国語の説明文も併記してください。
これで、プロに依頼したようなピクトグラムが数分で完成します。
印刷して店頭に貼るだけで、言語の壁を越えたコミュニケーションが可能になります。
無料版での作成可能数は変動しますので、作成する際にご自分で確認をお願いします。
成功事例:老舗和菓子店のインバウンド体験
ここで、熊本市川尻の老舗和菓子店「天明堂」様の成功事例をご紹介します。

創業200年の伝統×インバウンドの融合
天明堂様は創業200年を超える老舗和菓子店です。
数年前から和菓子づくり体験を開始されましたが、当初は日本人向けのみでした。
しかし、インバウンド需要の高まりを受けて、体験内容を多言語化(英語・スペイン語)したところ、驚くべき変化が。
参加者の50%以上が外国人に
2023年の実績:
- 参加者総数:300名
- うち外国人:150名(50%)
- うち欧米圏:50%以上
和菓子体験の内容
- 職人による和菓子づくりのデモンストレーション
- 季節の和菓子orくまモンの和菓子を自分で作成
- 抹茶と試食付き
- 多言語での説明(英語・スペイン語)
成功のポイント
- 「WAGASHI」という世界共通語の活用
- 寿司や天ぷらのように、和菓子も世界で認知されつつある
- 体験を通じた文化理解
- 作り方を教えるだけでなく、季節感や日本の美意識も伝える
- SNS映えするビジュアル
- 色鮮やかな和菓子は、そのまま最高のコンテンツに
- 多言語対応による安心感
- 「自分の言語で説明してもらえる」という安心感が予約を後押し
この事例から学べることは、「伝統×インバウンド」は決して相反するものではないということです。
むしろ、長年培ってきた技術や文化こそが、外国人観光客が求める「本物の日本体験」なのです。
今日から始められる具体的アクション
さて、ここまで様々な施策をご紹介してきました。
「でも、何から手をつければいいのか...」
そう思われる方も多いと思います。
そこで、優先順位をつけた実践ステップをご提案します。
【今日〜今週】最優先アクション
1. Googleビジネスプロフィールを確認する(30分)
- 自店舗のGoogleマップ情報を検索
- 写真は魅力的か? 情報は最新か?
- まずは現状を把握することから
2. ターゲット国を1つ決める(15分)
- 台湾・韓国・香港・中国のうち、どこを狙うか
- 自店舗の商品・サービスと相性が良い国は?
3. 店内を外国人目線でチェックする(1時間)
- 分かりにくい表示はないか?
- 誤解されそうなルールはないか?
- 写真を撮って、客観的に見てみる
【今月】重点アクション
4. Googleマップの多言語化(2〜3時間)
- Google翻訳やChatGPTを活用して、英語と繁体字の説明文を作成
- Googleビジネスプロフィールに登録
5. 免税対応の見える化(1時間)
- 免税対象商品を整理
- 「Tax Free」のサインを作成・掲示
- セット商品の検討
6. ピクトグラムの作成・掲示(2時間)
- ChatGPTでピクトグラム作成
- 必要な場所に掲示
【3ヶ月以内】継続アクション
7. SNSでの多言語発信開始(毎週30分)
- 週1回、商品やサービスの写真を投稿
- 多言語ハッシュタグを付ける
8. リール動画・ショート動画の作成(月1回・各1時間)
- スマホで30秒動画を撮影・編集
- Instagram Reels や YouTube Shorts に投稿
9. 効果測定と改善(月1回・1時間)
- Googleマップの閲覧数やクリック数をチェック
- 外国人客の来店数や売上を記録
- うまくいっていることを継続、改善点を修正
まとめ:インバウンドは「おもてなし」の進化形
講演の最後に、いつもお伝えしていることがあります。
「インバウンド対応は、特別なことではありません。日本が得意としてきた『おもてなし』を、言語と文化の違いを超えて提供することです」
相手のことを知り、相手が求めるものを理解し、相手が快適に過ごせるように配慮する。
これは、日本人のお客様に対しても、外国人のお客様に対しても、本質は同じです。
違うのは、その「方法」だけ。
- Googleマップという方法
- ピクトグラムという方法
- 多言語表記という方法
これらの「方法」を身につければ、あなたのお店の「おもてなしの心」は、世界中の人に届きます。
2030年には6,000万人の時代がやってくる
前編でもお伝えしましたが、政府は2030年に訪日外国人観光客6,000万人という目標を掲げています。
そして、オーバーツーリズム対策として、地方への分散を推進しています。
つまり、熊本に訪れる外国人観光客は、確実に増え続けます。
「まだ早い」のではなく、「今から準備すれば、ちょうど良い」のです。
今から取り組めば、数年後には:
- Googleマップで多言語のレビューが並び
- SNSで世界中から「行きたい!」のコメントが届き
- 外国人観光客がリピーターとして何度も訪れてくれる
そんな未来が待っています。
私がお手伝いできること
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「やってみたいけど、一人では不安...」 「うちのお店に合った具体的な方法を教えてほしい」 「実際に取り組んでいるが、成果が出ない」
そんな声を、講演後にたくさんいただきます。
私、村田久は、JTBでインバウンド誘致にも携わり、現在は中小企業診断士として、年間30回以上のセミナー講師と多数の企業様の個別支援を行っています。
あなたのお店・サービスに合わせた、オーダーメイドのインバウンド戦略をご提案します。
支援内容の例
- インバウンド集客戦略の立案
- Googleマップ・SNS活用の具体的支援
- 多言語ツール(ピクトグラム・案内表示)の作成
- 店舗スタッフ向けインバウンド研修
- 補助金活用支援(インバウンド対応設備導入など)
まずはお気軽にご相談ください
初回相談は無料です。
WEBサイト:https://q-zconsul.com/
お問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
「インバウンドの記事を読んだ」とお伝えいただければ、よりスムーズにお話しできます。
一緒に、世界中のYOU(お客様)に選ばれるお店を作りましょう!
【関連記事】
【専門家登録】 熊本商工会議所 / 熊本県商工会連合会 / 熊本県信用保証協会 / 熊本県事業承継・引継ぎセンター / 中小機構 経営アドバイザー

