創業におけるビジネスモデルの考え方【1】創業の実態とは
こんにちは。中小企業診断士の村田久です。
3月22日に熊本市のスタートアップ支援施設XOSS POINT.で第6回創業支援セミナー「実例から学ぶ!創業におけるビジネスモデルの考え方」を開催させていただきました。
創業支援セミナーは、XOSS POINT.の事業として年間6回開催されているもので、今回が今年度最後の開催となり、約20名の方にご参加いただきました。
この記事はこのような方におすすめ
この記事は、以下のように創業前・創業について考え始めた人を対象にしています。
- 創業を考えているけれど、何から手をつけて良いかわからない人
- 創業したいけど失敗しないか不安を感じている人
- 今の現状から何かを始めたいけど、なかなかスタートできない人
この記事を書いている人
「村田久中小企業診断士事務所」の代表として、旅行会社に勤める傍ら、週の半分を中小企業診断士の活動に充て、新規事業支援、事業承継支援、補助金申請書作成支援などを行うとともに、中小機構の経営アドバイザーとしても活動中。
この記事でわかること
- 創業者の実態を踏まえて「創業前に押さえるべきポイント」がわかる
- 創業者が持つべき心構えが理解できる
セミナーでお話しした内容
創業セミナーでは以下の目次に沿って、説明いたしました。
このブログでも、こちらの内容を複数回に分けてご紹介いたします。
- 創業の実態について
- 創業前に考えておくこと
- タイプ別創業のポイント
- 実例から学ぶビジネスモデルの考え方
- 失敗しない創業に向けた準備
創業セミナーで設定したゴール
本セミナーでは、以下のゴールを設定した上で、これから創業を考える方向けに、まずは「スタートアッププラン」を作った上で、継続できるビジネスモデルを作り上げるために、必要な考え方を理解しましょう、という流れでご説明しました。
世の中のあらゆるものには「プラン(設計図)」があります。
「設計図」というと、自動車やテレビなどの電化製品などを思い浮かべますが、それ以外にも、テーブル、椅子、鉛筆や消しゴムに至るまで、全ての製品を作るためには、「設計図」が必要です。
また、料理などにおいても「レシピ」という設計図があります。
それであれば、創業においても「設計図」があって然るべきです。
「いやいや、私レシピなくても美味しい料理作れますから!」
という方もいるでしょうが、それは何回も料理を作っているから、失敗をした経験があるから、そのことが、「美味しい料理を作る」という成功に結びついているのです。
何回も創業を経験したプロの起業家であれば、大体の感覚でも成功すると思いますが、我々は、レシピを見ずに美味しい料理を作れるほど創業の経験を積んでいません。
したがって、「設計図=スタートアッププラン」が必要となるわけです。
創業の実態について
それでは、早速スタートアッププラン作りに挑戦!といきたいところですが、まずは落ち着いてください。
スタートアッププランの作成に入る前に、創業の成功率を高めるためのインプットをしましょう。
すでに創業している先輩方から「創業の実態」について学ばせていただくことで、「自分だったらどうするだろう」という創業のシミュレーションを行うことができるはずです。
それでは、早速いくつか質問をさせていただきます。
質問1:起業目的で多いのはどれ?
- 社会貢献のため
- より高い所得を得るため
- 自由に仕事をするため
質問1の答え:③自由に仕事をするため
創業・起業は自分のため!
2020年版の中小企業白書によると、フリーランスの方が起業した目的としては、自分が「自分の裁量で自由に仕事をするため」「自分の好きな仕事をするため」「経験や技術を生かすことができるから」が上位になっています。
自分の得意でやりたいことをベースに自己決定することを求めて起業した方が多いんですね。
当たり前ですが。
創業する際って、「社会貢献がしたい」「人の役に立ちたい」といった、高尚な理由がなくてはダメなのかと思いましたが、意外に自分のために創業・起業する人が多いことがわかります。
まずは、創業時点の「思い」が重要なことが伺えます。
質問2:創業5年後の継続率は?
- 8割継続している(2割廃業)
- 5割継続している(5割廃業)
- 1割継続している(9割廃業)
質問2の答え:①8割継続している
創業の継続率〜10年後成功率6%?それってホント?
創業の継続率・・・5年後9割?10年後1割以下?
ネットを調べるといろいろな記事がありますね。
でも、どれも古くて、ブログの記事に書かれているものだけで、正確なデータはなさそう。
そんな中、2017年の中小企業白書ではこんなデータが掲載されていました。
起業後の企業生存率の国際比較によると、日本における5年後の生存率は81.7%!
諸外国と比べても圧倒的に高い生存率です。
おそらく、日本では創業の絶対数が少なく、成功確率を高めてから創業する人が多いので、途中で継続できない方の比率が低くなっているのでは、と考えられます。
ただ、思いのほか、高い印象を受けないでしょうか。
セミナーでも、①に手を挙げる方はほとんどいらっしゃいません・・・
これから創業しようとしているのに、ずいぶん悲観的ですね(笑)
楽観的すぎてもいけませんが、きちんとした準備をすれば、継続できる可能性は高い、というように考えていただければと思います。
もちろん、いわゆる「大成功」の一つと考えられる「上場」とか「ベンチャーキャピタルからの出資」等ができるケースは、8割と言わず、非常に低いと思われます。
ただ、その「大成功」まではいかなくても「そこそこ成功」・「失敗しないで継続」は十分に可能性があるということです。
この辺りは「諸説あり」という面もあるかもしれませんが、公的資料の記載なので、信頼に足ると思います。
県別の開業率・廃業率から見えること〜熊本県は創業しやすく廃業しにくい県!
今回は熊本市でのセミナーでしたので、熊本県の開廃業率について取り上げます。
2022年版の小規模企業白書によると、熊本の開業率は5.3%で10位!廃業率は2.8%で45位!
つまり、熊本は創業しやすく廃業しづらい県!
大体年間で4,000件開業、2,300件廃業の計算です。
これが多いか少ないかは、なんとも言えませんが、少なくとも全国有数の創業に向いている県と言えそうです。
創業時に苦労したこと〜資金繰りと販路開拓〜
創業の目的と創業後の継続率についてイメージができたところで、実際に直面する「課題」について見てみましょう。
創業時にはどのようなことが課題となるのでしょうか。
様々な課題が想定されますが、日本政策金融公庫の調査によると、創業者が開業時に苦労したことの一位は「資金繰り」、二位は「販路開拓」となっていました。
そして、創業から一年以内の事業者に同じ質問をしたところ、一位が「販路開拓」、二位が「資金繰り」と、一位と二位が入れ替わっただけで、苦労していることは同じという結果になっています。
つまり、創業前の現段階から、「販路開拓と資金繰り」について対策を進めることで成功の確率が高くなる、とも言えるのではないでしょうか。
まとめ:「創業の実態から見えること」と「創業のポイント」
ここまで、簡単に創業の実態について、データを元に見てきました。
そこから見えることについてまとめます。
- 「やりたいこと・できること・自己決定」=「自分のため」が起業の目的
- 創業の5年継続率は約8割
- 熊本県は起業しやすい県
- 創業時の問題点は「資金繰り」「販路開拓」
全ての創業データがあるわけではありませんので、あくまで今回取り上げたデータにおいて言えることです。
このまとめから押さえるべき創業のポイントは以下のとおりです。
○自分の思いを確固たるものにする
○ちゃんと準備すれば失敗確率を減らせる
○開業に有利な環境を利用する
○創業には「悩み」がつきもの!だから準備する
このポイントをしっかり押さえて準備をすることが、成功する創業につながります。
次回以降は、それぞれの具体的な内容に入っていきます。
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました!
中小企業診断士の村田久でした。