創業アイデアを“選ばれ続ける商売”に変えるために〜事業計画・売上づくり・お金の基本〜

こんにちは。
中小企業診断士の村田久です。

先日、熊本市の創業支援施設 XOSS POINT. (クロスポイント)にて、創業支援セミナーに登壇しました。

テーマは、

「創業前後に知っておきたい!事業計画・売上づくり・お金の基本」

です。

今回のセミナーでは、創業手続きの説明ではなく、参加された方がご自身の事業に置き換えて考えられるように、「創業アイデアを、続けられる商売に変える」ことを大切にしてお話ししました。

創業というと、

「どんな商品を作るか」
「どんなサービスを提供するか」
「どこで始めるか」
「補助金や融資を使えるか」

といった話に目が向きやすくなります。

もちろん、それらも大切です。

ただ、私が創業前後の方とお話ししていて「足りないな」と感じるのは、もう少し手前の部分です。

それは、

どのようなお客様に、なぜ選ばれるのか。
そして、どうすれば選ばれ続けるのか。

という視点です。


創業時は、商品・サービスへの思いが強くなりやすい

創業を考えている方とお話ししていると、商品やサービスへの強い思いを感じることがよくあります。

「この商品は本当に良いものなので、きっとお客様に来てもらえるはず」
「これだけ苦労して作っているのだから、選んでもらえるはず」
「自分のサービスは他にはない価値があるので、必要としている人がいるはず」

こうした思いは、とても大切です。

思いがなければ、事業を始めるエネルギーは生まれません。
苦労して商品を作ることも、サービスを磨き続けることも難しいと思います。

私自身、相談を受ける中で、事業者の方の思いやこだわりに触れる場面は多くあります。

なぜこの事業を始めたいのか。
なぜこの商品を作ったのか。
なぜこの地域で取り組むのか。
どんな人に喜んでもらいたいのか。

こうした背景には、その人ならではのストーリーがあります。

そして、そのストーリーは小規模事業者にとって、とても大きな魅力になります。

大手企業のように広告費をかけられなくても、作り手の顔が見えること、地域との関係があること、こだわりや背景が伝わることは、お客様に選ばれる理由になり得ます。

だからこそ、創業時の思いや苦労は、決して軽く扱うべきものではありません。

むしろ、事業の核になる大切なものです。


ただし、想いは「お客様にとっての価値」として伝える必要がある

一方で、気をつけたいこともあります。

それは、作り手の想いや苦労を、そのまま伝えるだけでは、お客様に価値が伝わりきらないことがあるということです。

「これだけ苦労して作りました」
「これだけこだわっています」
「自分たちは本気でやっています」

このような発信は大切です。

ただ、それだけではお客様から見ると、

「それは自分にとって、どんな良さがあるのか」
「どんな悩みを解決してくれるのか」
「どんな時間や体験を得られるのか」
「なぜ他ではなく、ここを選ぶ意味があるのか」

が見えにくい場合があります。

お客様は、作り手の想いや苦労に共感して選ぶことがあります。
ただし、それは単に「苦労しているから」ではなく、その背景から生まれる価値や意味が、自分にとって伝わったときです。

たとえば、

「素材にこだわっています」

という表現だけでは、少し作り手側の説明に留まります。

これを、

「安心して毎日食べられるように、素材を選んでいます」

と伝えると、お客様にとっての価値が見えやすくなります。

また、

「手間をかけて作っています」

という表現も、

「忙しい毎日の中でも、ほっとできる時間を届けるために、手間を惜しまず作っています」

と伝えると、お客様の生活場面とつながります。

観光や地域資源を活かした事業であれば、

「地域資源を活用しています」

だけではなく、

「この地域でしか味わえない体験を通じて、旅の記憶に残る時間を提供しています」

と伝えることで、お客様にとっての意味が伝わりやすくなります。

つまり、作り手の想いや苦労は大切です。

ただし、それをお客様にとっての価値に翻訳することが必要です。

ここが、創業アイデアを商売に変えるうえで、とても大切なポイントだと感じています。


「ターゲットは誰ですか?」に答えられるか

創業相談の中で、私がよく確認することの一つに、

「ターゲットは誰ですか?」

という問いがあります。

この問いに対して、すぐに具体的に答えられる方は、実は多くありません。

「地域の方です」
「女性です」
「若い人から高齢者まで幅広くです」
「興味がある人なら誰でもです」

このような答えになることも少なくありません。

もちろん、最初から細かく決まっていなくても構いません。

創業前後の段階では、仮説でよいと思います。

ただし、ターゲットがぼんやりしたままだと、次のようなことが起こりやすくなります。

誰に向けて発信すればよいかわからない。
どんな言葉で伝えればよいかわからない。
価格をどの水準にすればよいかわからない。
どこでお客様と接点を持てばよいかわからない。
自分の商品・サービスの強みをどう伝えればよいかわからない。

つまり、ターゲットがぼんやりしていると、集客も価格設定も事業計画もぼんやりしてしまうのです。

事業を始めるときに大切なのは、

「自分は何を売りたいのか」

だけではありません。

どのようなお客様に、自分の想いや商品・サービスが価値として届くのか。

ここを考えることです。


絞るのは、お客様を減らすためではない

ターゲットを考えましょうと言うと、

「絞ると、お客様が減ってしまうのではないか」

と不安に感じる方もいます。

しかし、ターゲットを考える目的は、お客様を減らすことではありません。

伝わる言葉をつくるためです。

たとえば、

「女性向けのお店です」

と言われても、少しぼんやりしています。

一方で、

「仕事帰りに一人でも立ち寄れて、少し気持ちを整えられる場所を探している30代の働く女性向けのお店です」

と言われると、誰に向けたお店なのかが見えてきます。

また、

「誰でも使えるサービスです」

と言われるよりも、

「創業直後で、まだ実績の見せ方やホームページの内容に悩んでいる個人事業主向けのサービスです」

と言われた方が、必要としている人に届きやすくなります。

ターゲットを考えることは、誰かを排除することではありません。

必要としている人に、きちんと届くようにすることです。

そして、その人に届く言葉で、自分たちの想いや価値を伝えることです。


事業を続けるには「選ばれ続ける理由」が必要

創業時に大切なのは、最初のお客様を獲得することです。

しかし、それだけでは事業は続きません。

一度選ばれることも大切ですが、それ以上に大切なのは、選ばれ続けることです。

最初に来てくださったお客様が、もう一度利用してくれる。
知人に紹介してくれる。
口コミを書いてくれる。
継続して契約してくれる。
必要なときに思い出してくれる。

こうした関係が生まれていくことで、事業は少しずつ安定していきます。

そのためには、

「どのようなお客様に選ばれたいのか」
「そのお客様は、なぜ自分の商品・サービスを選ぶのか」
「選んだ後に、どのような満足や変化があるのか」
「また選んでもらうために、どのような仕組みが必要なのか」

を考える必要があります。

創業アイデアを商売に変えるということは、単に商品を販売することではありません。

作り手の想いを、お客様にとっての価値に変え、その価値を必要としている人に届け、選ばれ続ける流れをつくること。

これが大切だと考えています。


売上は「選ばれた結果」として生まれる

売上を増やしたいという相談は、創業前後に限らず多くあります。

ただ、売上は突然生まれるものではありません。

お客様に知ってもらう。
興味を持ってもらう。
安心してもらう。
価値を感じてもらう。
購入・利用してもらう。
満足してもらう。
もう一度選んでもらう。

この流れの結果として、売上が生まれます。

そのため、売上を考えるときには、単に、

「もっと宣伝する」
「SNSを頑張る」
「チラシを配る」

だけでは不十分です。

まずは、

誰に選ばれたいのか
なぜ選ばれるのか
どこで知ってもらうのか
何を見れば安心して申し込めるのか

を整理する必要があります。

セミナーの中では、これを 「最初の10人のお客様はどこから来るか」 という形で考えていただきました。

最初から多くのお客様を集めようとするよりも、まずは最初に選んでくれそうなお客様を具体的に考える。

それが、現実的な売上づくりの出発点になります。


価格は「価値」と「続けられる金額」の両方で考える

お客様に選ばれることを考えるとき、価格設定も避けて通れません。

創業時には、価格を安く設定しがちです。

「まだ実績がないから」
「高いと言われたら不安だから」
「知人だから安くしておこう」
「まずは買ってもらうことが大切だから」

こう考える気持ちはよくわかります。

しかし、安く始めすぎると、後から苦しくなることがあります。

原価や材料費だけでなく、自分の時間、準備時間、移動時間、家賃、人件費、広告費、将来への投資まで考えなければ、事業として続けることが難しくなります。

価格は、単なる金額ではありません。

お客様が感じる価値と、自分が事業を続けられる金額の両方から考える必要があります。

安ければ選ばれる、というわけではありません。

むしろ、なぜその価格なのかが伝わらなければ、安くしても選ばれないことがあります。

反対に、価値がきちんと伝われば、適正な価格で選ばれる可能性があります。

大切なのは、価格を下げることではなく、価格に見合う価値を伝えることです。

そして、その価格で事業を続けられるかまで考えることです。


売上があっても、お金が残るとは限らない

事業を続けるためには、売上が必要です。

しかし、売上があるだけでは十分ではありません。

売上から、仕入れ、材料費、人件費、家賃、水道光熱費、広告費、借入返済、税金などを支払っていく必要があります。

その結果として、お金が残らなければ、事業は苦しくなります。

経営相談の現場では、

「売上はあるのに、お金が残らない」
「忙しいのに、利益が少ない」
「黒字のはずなのに、資金繰りが苦しい」

という相談も少なくありません。

これは、創業前後の方だけでなく、既存事業者にも共通する課題です。

だからこそ、創業時から、

「売上が立つか」
「利益が残るか」
「入金と支払いのタイミングは大丈夫か」
「借入を返しても資金繰りが回るか」

を考えておく必要があります。

セミナーでも、売上・原価・固定費・利益、そして利益と現金の違いについてお伝えしました。


事業計画は、書類を作ることが目的ではない

事業計画というと、融資や補助金のために作る書類というイメージを持つ方も多いと思います。

もちろん、金融機関や支援機関に説明するための計画書は必要です。

しかし、本来の事業計画は、書類を作ることが目的ではありません。

自分の事業を整理し、これから何をすべきかを見える化するためのものです。

誰に選ばれるのか。
なぜ選ばれるのか。
どのように知ってもらうのか。
いくらで売るのか。
どのくらい売る必要があるのか。
お金は残るのか。
資金は足りるのか。

これらを整理することが、事業計画です。

きれいな文章を書くことよりも、実際の経営に使えることが大切です。

作り手の想いやストーリーを、お客様にとっての価値に変える。
その価値を必要としている人に届ける。
適正な価格で選ばれる形にする。
売上が立ち、お金が残る流れをつくる。

この一連の整理こそが、事業計画だと考えています。


創業だけでなく、既存事業の見直しにも役立つ

今回のセミナーは、創業前後の方向けに行いました。

しかし、ここでお伝えした考え方は、すでに事業を行っている方にもそのまま使えます。

たとえば、既存事業者の方でも、次のような悩みはないでしょうか。

「良い商品なのに、なかなか売上につながらない」
「自社の強みやストーリーをうまく伝えられていない」
「お客様が誰なのか、改めて考える機会がない」
「価格を見直したいが、どう考えればよいかわからない」
「ホームページやSNSで何を伝えればよいかわからない」
「売上はあるが、利益やお金が残らない」
「新しいサービスを始めたいが、誰に売るべきか整理できていない」

これらは、創業時だけの問題ではありません。

事業を続けている中でも、何度も見直すべきテーマです。

むしろ、すでに事業を行っている方は、実際のお客様の反応や売上データがある分、より具体的に見直すことができます。

創業時に考えるべきことは、経営を続ける中でも繰り返し考えるべきことです。


このシリーズでお伝えしていくこと

今回の記事は、シリーズ全体の導入です。

今後は、XOSS POINT.でのセミナー内容をもとに、事業計画・売上づくり・価格設定・お金の流れについて、テーマごとに掘り下げていきます。

第1回

事業の核は「誰の何を解決するか」で決まる

商品・サービスそのものではなく、お客様の困りごとや理想の状態から事業を考える方法を整理します。

第2回

最初の10人のお客様はどこから来るのか

ターゲット設定と、最初のお客様づくりの考え方をお伝えします。

第3回

売上は客数×単価で考える。必要売上から逆算する経営の基本

売上目標を感覚ではなく、客数・単価・リピートに分解して考える方法を整理します。

第4回

安くすれば売れる、は危険。価格設定で失敗しない考え方

価格を下げすぎて苦しくならないために、価値と継続性の両面から価格を考えます。

第5回

売上があるのにお金が残らない理由。利益と現金の違い

利益と現金の違い、固定費、返済、資金繰りの基本について整理します。

第6回

創業時に必要なお金と、資金調達で考えておくべきこと

設備資金、運転資金、生活費、融資、補助金など、創業時のお金の考え方をお伝えします。


まとめ

創業時には、自分の商品・サービスへの思いが強くなります。

その思いは、とても大切です。

また、作り手の苦労や背景にあるストーリーは、お客様に選ばれる理由にもなります。

ただし、事業を続けるためには、その想いやストーリーを、お客様にとっての価値として伝える必要があります。

大切なのは、

どのようなお客様に、なぜ選ばれるのか。
そして、どうすれば選ばれ続けるのか。

ここを考えることです。

お客様に選ばれる理由があるから、売上が生まれます。
適正な価格で選ばれるから、利益が残ります。
利益とお金の流れを見える化するから、事業を続ける判断ができます。

事業計画とは、単なる書類ではありません。

自分の想いを、お客様にとっての価値に変え、選ばれ続ける形に整えるための道具です。

このシリーズでは、創業前後の方はもちろん、今の事業を見直したい方にも役立つように、経営の基本を一つずつ整理していきます。


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村田久中小企業診断士事務所では、創業前後の事業計画だけでなく、既存事業者の売上改善、価格設定、利益改善、資金繰り、補助金活用、経営改善のご相談にも対応しています。

「良い商品なのに、なかなか売上につながらない」
「自社の強みやストーリーをうまく伝えたい」
「誰に、なぜ選ばれているのかを整理したい」
「価格設定を見直したい」
「売上はあるが、利益やお金が残らない」
「新しいサービスをどう形にすればよいかわからない」
「金融機関や補助金申請に向けて事業計画を整理したい」

このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

事業の現状を整理しながら、売上が立ち、お金が残り、続けられる形にするための方向性を一緒に考えます。

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まずは現状の整理から、お気軽にご相談ください。