未来はどうなるか分からない〜NHK朝ドラ 舞いあがれ!に見る「コネクティング ザ ドッツ」の考え方

未来はどうなるか分からない〜NHK朝ドラ 舞いあがれ!に見る「コネクティング ザ ドッツ」の考え方

みなさんこんにちは。中小企業診断士の村田久(むらたひさし)です。

今日は、いつもと趣向を変えて、先日放送終了したNHKの朝ドラ「舞いあがれ!」について、中小企業診断士としての観点を踏まえて、書かせていただきます。

と言うのも、見終わった後、「まさにコネクティング・ザ・ドッツだな〜」と感じる素晴らしい終わり方だったので、多くの人にドラマのことを知ってもらいたい、と考えたからです。

コネクティング ザ ドッツとは

2005年にAppleの創業者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏が、スタンフォード大学の卒業式で行った演説で、彼の人生の重要なエピソードが語られ、その中で「コネクティング・ザ・ドッツ」という考え方が紹介されました。

コネクティング・ザ・ドッツ(Connecting the dots)は、人生の出来事や経験が後から振り返ると意味のあるパターンやつながりを持つことを表現する概念です

これは、個々の出来事がその時点ではランダムや無関係に見えても、後から見ると大きな意味や目的があることを示唆しています。

例えば、ジョブズは大学を中退した後に、書道のクラスに出会ったことで、その後のAppleのMacintoshコンピュータに美しいタイポグラフィを導入することに繋がる、ということがありました。

何かにつながることを意識して書道のクラスに入ったのではなく、直感で選んだことが、結果として後々の成功につながった、と言うことです。

ジョブズは、未来は予測できないため、過去の経験がどのように将来の成功につながるかを事前に知ることはできないと強調しました。

そのため、彼は人々に、直感や信念を信じて前に進むことが重要であると伝えました。

そして、後に振り返ることで、それらの出来事がどのように繋がっていたかを理解することができる、と言っています。

朝ドラ「舞いあがれ!」の主人公である「舞」は、まさにこの「コネクティング・ザ・ドッツ」を体現した人物です。

ポイント

・コネクティング・ザ・ドッツとは、人生の出来事や経験が後から振り返ると意味のあるパターンやつながりを持つことを表現する概念

・朝ドラ「舞いあがれ!」は、まさにこの「コネクティング・ザ・ドッツ」を表した物語

舞いあがれ!に見る「コネクティング ザ ドッツ」とは

以下、ドラマのネタバレを含みますので、ご注意ください。

舞いあがれ!あらすじ

ヒロイン・舞は、ものづくりの町・東大阪で町工場を営む父・浩太と母・めぐみ、そして兄・悠人との4人暮らし。引っ込み思案だった舞ですが、自然豊かな長崎の五島列島にいる祖母・祥子の元を訪れ、五島列島の広い空に風を受けて力強く舞いあがる「ばらもんだこ」にられます。

あんなふうに空高く飛びたい──空へのあこがれは、パイロットになる夢へとふくらんでいきます。本物のパイロットになるべく努力を重ねる舞ですが、想像以上に厳しい道のりが待ち受けるのでした。

東大阪で実感する「ものづくり」の喜びと、自然とともに生きる離島での暮らし。2つの故郷である東大阪と五島、それぞれの土地に暮らすさまざまな人とのきずなを深めた舞は、やがて新しい形で空への夢を見つけていきます。夢の飛行機作りに情熱を燃やす仲間たちとともに、舞の夢は、みんなの夢をのせた新しい翼となって大空へ飛び立ちます!!

NHK番組ホームページより

賛否両論!?やりたいことがコロコロ変わる主人公?

朝ドラのヒロインというと、幼い頃の苦労などを経て、一生の夢を見つけ、その実現に向けてひたむきに頑張って、困難を乗り越え達成する、といったテンプレートがある気がします。

舞いあがれ!の主人公、福原遥さん演じる岩倉舞(いわくらまい)は、幼いころ、五島列島で「ばらもん凧」に魅入られます。

その後、空を飛ぶ飛行機に憧れて、家族を元気づけようと紙飛行機を作ったりするなど、「空」「飛行機」を軸に前半は展開していきます。

飛行機への憧れは、町工場を営んでいたお父さんがいつも話していた「いつか工場で飛行機の部品・ネジを作りたい」という夢の影響もあり、確固たるものになっていく・・・というテンプレートに則ったものにように見えたのですが。

中盤くらいから、番組の放送中に視聴者から不安の声が上がるほど、やりたいことがどんどん変わり、その度に新たな挑戦をし続けます。

最初は「飛行機をつくりたい」から、

大学での人力飛行機のパイロットを経て、

旅客機のパイロットを目指すようになり、

お父さんの死を経験して、

実家の工場(IWAKURA)に入社してものづくりに取り組み、

さらに東大阪の町工場の生き残り&活性化するために、起業して社長になります。

最後は、空飛ぶ車の開発に参画して・・・という具合です。

今までにない、やりたいことが変わる朝ドラヒロインに、放送中のSNSは賛否両論でした。

どんどん変わる展開に「ついていけない・・・」と、離脱した視聴者も多かったようです。

かく言う私自身も、最初は両親に反対されつつ航空学校に入学し、大変苦労してパイロットの資格を取得したにも関わらず、実家の工場に入社した時は「パイロットにならんのかい!」とツッコミを入れたくなりました。

でも、

朝ドラヒロインのテンプレートに囚われていたのは私の方でした。

終盤での「コネクティング ザ ドッツ」さまざまな挑戦・経験は無駄にはならない

挑戦し続けること・出逢い続けること、それが道を切り開く

舞の挑戦は必ずしも成功したものばかりではなく、人力飛行機での記録挑戦や飛行機の部品製造など、求めていた結果に繋がらないものありました。

旅客機のパイロットになる、という挑戦は、リーマンショックによる入社延期と父の死、という出来事の中で、工場の再建という目標に変わっていきました。

ただ、舞はその時その時にやりたいことに挑戦する中で、さまざまな人に出逢います。

長崎五島では、祖母の祥子や島の人々、

大学では、人力飛行機サークル「なにわバードマン」で女性パイロットの由良や設計担当の刈谷、

航空学校では、教官のサンダー大河内や同期のメンバー、

東大阪の町工場では、ベテラン工員の笠巻や菱崎重工の荒金、新聞記者の御薗や町工場の経営者仲間など、取り巻く人々は本当に多種多様です。

そして、挑戦し続けて、人に出逢い続けた先に、全てが一つになる瞬間がやってきます。

未来で「空飛ぶ車」のパイロットに!部品は東大阪の町工場製!ネジはIWAKURA製!

コロナ禍の現代を経て、2027年まで時が進んだ先には、空飛ぶ車が完成し、そのパイロットに舞が抜擢される、という未来が待っていました。

空飛ぶ車「かささぎ」は、「なにわバードマン」の刈谷先輩と玉本先輩が中心となり、東大阪の工場の部品を使い、元菱崎重工の荒金のアドバイスと投資家のサポートを得て、完成した乗り物です。

ネジはIWAKURA製。お父さんの夢が叶った瞬間でもあります。

その「かささぎ」をパイロットの資格を有する舞が操縦して、五島列島を祖母の祥子を乗せて飛ぶという、今までの全ての挑戦、出会った人々、点と点が繋がる「コネクティング ザ ドッツ」な展開でした。

この展開を「出来過ぎ」「迷走しすぎ」と見る方もいるかもしれませんが、見方は人それぞれ。

実はここまでの展開は全てオープニングの映像で描かれていました!だから最初から決まっていた流れなんですね。

この先も人生は続いていく〜目的地は一つではない

最終回、空飛ぶ車「かささぎ」の操縦席に座った舞が番組の一番最後に言うセリフがこちら。

「一番目の目的地に到着します」

最終回でこのセリフが出てきたことに驚きました。

リアルタイム視聴していたのですが、最終回なのに一番目の目的地?二番目はどこ?

と違和感を感じるセリフだったからです。

でも、空飛ぶ車の成功で舞の人生が終わるわけではなく、その後も人生は続いていく、と言うことであり、次の目的地は新たな挑戦の先にある、ことを意味しているのだと思います。

航空学校編の大河内教官の言葉にも通じるものがあります。

『プロになれば、君たちはまた苦しむかもしれない。だが答えはひとつではない。大切なのは…これからどう生きるかだ』

「舞いあがれ!」から我々は何を学ぶのか

現実世界で生きている我々は、朝ドラと違い、目標に向かって一本道の人生を歩いていけるわけではありません。

幼い頃からの夢を追い続けて大人になって実現した、朝ドラのテンプレ主人公のような人は、ほんの一握りでしょう。

自分自身を振り返った時に、舞と同じように「何やりたいの?」と思うくらい、フラフラいろんなことをやっているのではないでしょうか。

もちろん、現実には舞いあがれ!のように、全てが一気に繋がる「コネクティング ザ ドッツ」のような展開は、なかなか無いと思います。

とはいえ、ティーブ・ジョブズ氏が体現している通り、全くあり得ない話でもありません。

従って我々が「舞いあがれ!」から学ぶべきことは、以下のような点だと考えています。

  • 挑戦し続けることによって得られる様々な経験は、決して無駄にならない、ということ。
  • 「なんでそんなことをやったんだ」「あんなことが起きるなんて」とか、その時は失敗だと感じていても、後々つながることがあるということ。
  • 常に楽しいこと、やりたいことに取り組んだうえで、結果として点と点がつながることがある、ということ。

大事なのは新しく「やりたいこと」が目の前に現れたときに、現状維持から、そちらを選択する力・決断する力。

点を生み出す行動力。

挑戦した結果?失敗したらどうする?恥ずかしい?

うまくいかない方法を試しただけ。また挑戦すれば良い!

未来の自分からは「よくやった」って褒められるはず。

これからも、どんどん挑戦し続けよう、と思わされる、そんな朝ドラでした。

私がこの記事を書きました

村田久

「村田久中小企業診断士事務所」の代表として、訪日インバウンド・観光事業・新規事業支援、事業承継支援、補助金申請書作成支援などを行うとともに、中小機構の経営アドバイザーとしても活動中。熊本市在住。 趣味はアウトドア。最近はテントサウナを県内各地で楽しんでいる。

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