- 2024年4月18日
「2024年3月の訪日外国人客300万人超え」と都市部から熊本・地域への分散化対応
2024年4月18日の熊本日日新聞一面、および新聞各紙に「3月訪日客300万人超単月で過去最多」の記事が掲載されました……
前回の記事『「2024年3月の訪日外国人客300万人超え」と都市部から熊本・地域への分散化対応』の中で、熊本県全体での受け入れ体制の整備が必要と書きました。
ただし、そもそも訪日外国人の受け入れ人数を増やす目的は、人口減少が進む日本において、外国人観光客による消費を促進することで、「国民経済の発展、国際相互理解の増進、 国民生活の安定向上」を図ること。
つまり、「外国人の購買力をお借りして、縮小が進む国内消費を底上げしよう!」です。
どれだけ地域への分散化が進んだとしても、訪問した地域で消費してもらわなければ意味がありません。
今回は、それを踏まえて、2023年訪日外国人消費動向調査から見る熊本県の位置付けと、分散した外国人の消費額の確保が進んでいると思われる県について考えたいと思います。
前回の記事でも書いた通り、訪日外国人の消費総額では熊本県は18位となっており、熊本県の人口が全国で23番目、GDPが24番目あたりであることを鑑みると、18位という順位は、結構頑張っている数値だと思います。
ただ、上位は大都市で占められています。
大都市は宿泊施設や飛行機の国際線が就航しているなど、そもそも外国人が訪れる環境となっているため、単純に消費総額を見るだけでは、「当たり前でしょ」となってしまいます。
今後、国の政策の後押しもあり、地域への分散化が進んだ際に、その人数×一人当たり消費額分の経済効果があると考えた場合、旅行者1名当たりの消費単価を把握する必要があります。
ここでは都道府県別の訪日外国人消費額(単価)を比べてみます。
観光庁が調査を行なっている「訪日外国人消費動向調査」の2023年4-12月期を集計しました。
観光・レジャー目的の訪日外国人消費単価を見ると、熊本県は3.3万円で全国31位でした。
ホテルの単価が圧倒的に高い東京(14.4万円)、リゾートでの滞在が長くなる北海道(12.9万円)・沖縄(11.4万円)が上位なのはわかるのですが、なぜか地方の「香川県」「新潟県」「宮城県」「鹿児島県」の単価が高くなっています。
香川県に至っては、熊本県の約2倍の消費額です。
香川県・・・うどん?金毘羅?小豆島?
新潟県・・・お米?日本酒?スキー?佐渡?
宮城県・・・松島?仙台城址?瑞鳳殿?お米?
どれも魅力的ではありますが、熊本県も決して負けていない気がします。
あとは新幹線や直行便の便数など、交通の便なども大きな要素と考えられます。
もう少し調べるために、全体を100%とした場合の各費用の構成比を見てみました。
熊本県と比較すると新潟県と鹿児島県の宿泊費、宮城県の買物代の割合が顕著に高そうです。
新潟県の娯楽費も全国の中でトップクラスに割合が高く見えます。
香川県は熊本県と同様の構成比に見えるので、全体的に高額になっていると思われます。
実際の各県・各費用の金額がこちらです。
(万円) | ツアー費 | 宿泊費 | 飲食費 | 交通費 | 娯楽等 | 買物代 | 消費単価計 |
香川県 | 1.0 | 2.4 | 1.3 | 0.2 | 0.2 | 1.3 | 6.4 |
新潟県 | 0.5 | 2.7 | 1.1 | 0.3 | 0.6 | 0.7 | 5.9 |
宮城県 | 1.1 | 1.7 | 1.0 | 0.1 | 0.1 | 1.8 | 5.7 |
鹿児島県 | 0.5 | 2.0 | 1.1 | 0.2 | 0.1 | 0.8 | 4.7 |
熊本県 | 0.6 | 1.2 | 0.7 | 0.1 | 0.1 | 0.6 | 3.3 |
実際の金額を見ると、香川県(2.4万円)・新潟県(2.7万円)の宿泊費と熊本県の宿泊費(1.2万円)は2倍の開きがあります。
宿泊費は、その県にある宿泊施設の単価が高い場合や滞在日数が増えると増加しますが、同じ地方で宿泊施設の単価に大きな違いがないとすると、熊本県は通り過ぎるか1泊のみ、香川県や新潟県は2泊〜3泊以上の滞在型が多いのではと想定されます。
それに伴い、飲食費も他県より低くなっていると考えられます。
せっかく美味しいものがたくさんあるのに、外国人の皆さんに知ってもらえていない・楽しんでもらえていないとすると、とても残念です。
また、買物代も香川県(1.3万円)・宮城県(1.8万円)と比較して、熊本県は半分以下(0.6万円)にとどまっています。
熊本にも農畜産物や魚介類をはじめ、魅力的な産品はありますが、訪日外国人が購入しやすく・持ち帰りやすいものが少ないのかもしれません。
今後、香川県や宮城県の訪日外国人の買物状況を詳しく調べてみます。
さらに特徴的なのは、娯楽費で新潟県が突出して多くなっており(0.6万円)、全国でも大阪府と並んでトップの金額です。
調査時期の4月〜12月とは合わないですが、スキーなどのアクティビティが充実している?
こちらも、もう少し調べる必要がありそうです。
ここまで県別の訪日外国人消費額を見てきましたが、消費単価を向上させるための要素は複数が絡んでいるため、消費額が高い宿泊代を増やす=泊数を増やしてもらう、というのが近道であることはわかりますが、簡単ではありません。
ただ、やはり基本的な流れとなりますが、ターゲットの明確化から、食事・ショッピングといった基本的な受入体制の整備、新たなアクティビティの創出(コト消費)を先行的に行なうと共に、ターゲットに向けた情報発信を両輪で進めることで、滞在日数の拡大を図る、という流れを高速で繰り返すことが必要だと考えます。
現在の入り込み数、将来的な動向やカントリーリスクを踏まえた上で、熊本県の魅力が刺さるターゲットを設定。
多言語メニューやオペレーション対応、ベジタリアンやヴィーガンなど、多様性にも配慮した対応。
持ち運びしやすく、自国への持ち込み時に税関で引っ掛かることがない土産物を創出。
アドベンチャーツーリズムなどの長期滞在に適したプログラムや、地元商店街、伝統的な職人・技術体験、酒蔵や和菓子作り体験などのコト消費の充実化。
文化の異なる方々を受け入れるためには、基本的な語学はもちろんですが、コミュニケーション力や多様な価値観を尊重する考え方などを持った人材の育成が必要。
STEP2〜4で整備したコンテンツを商品化し、ターゲットへプロモーション活動を実施。
魅力的なアクティビティや食事を体験するために、熊本で「もう一泊」してもらう。
それぞれの項目がさらに細分化されるので、全体を通して取り組むことは非常に難しいと思いますが、2030年に現在の倍以上に拡大する見込みであるこの市場に対して、なんとか貢献していきたいと考えています。
当事務所でも、本件については継続的に考えていきます。
皆様からもご意見をいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
「村田久中小企業診断士事務所」の代表として、訪日インバウンド・観光事業・新規事業支援、事業承継支援、補助金申請書作成支援などを行うとともに、中小機構の経営アドバイザーとしても活動中。熊本市在住。 趣味はアウトドア。最近はテントサウナを県内各地で楽しんでいる。